“架空の運送会社”をコンセプトに、洋服や日用品、お土産を提供する『FreshService』が大須の『JACK IN THE BOX』内にオープンした9月21日(土)、同ショップを手掛ける南貴之氏が来名。オープンから店頭に立ち、訪れたお客さんたちに商品を説明したり撮影に応じたりしていました。その楽しく貴重な時間を拝借。弊社代表取締役の樋口と、『FreshService』オープンの経緯から、地方のセレクトショップの良さや在り方、さらには今や無視できないネット通販まで、対談形式で語っていただきました。

interview by N.Tsuboi

まずは、お2人の出会いとその時の印象から教えていただけますか

樋口： 10年ぐらい前、あるブランドの展示会へ行った時に初めてお会いしたんじゃないかな。有名人なのに、僕らにもすごくフレンドリーに話をしてくださる人だなと思いました。

南： 僕は、愛知や岐阜あたりを牛耳っている戦国大名の1人という感じです(笑)。

その表現面白いですね。でも、的を射ていると思います(笑)。では、今回「FreshService」を『JACK IN THE BOX』さん内にオープンした経緯をお聞きしてもよろしいでしょうか

南： 「Graphpaper」のポップアップを『JACK IN THE BOX』さん内でやらせていただいた際、「ココいいなぁ」って思っていました。僕は行った先のお店で「ココをこうしたいな」と考えることが好きなので、勝手にこの倉庫感ある空間で「FreshService」をやりたいなと思っていて。そこで、東京に樋口さんがいらっしゃったタイミングでお願いしたら、「いいですよ」とおっしゃっていただいたので、今回やらせていただけることになりました。

樋口： 「FreshService」さんの業態は、強化したかったけど自分たちではなかなか出来ない部分でした。それをこんな優秀な人がやってくれるなんて願ってもないお話しだし、逆にありがたかったです。

路面店を出すという考えはなかったのでしょうか

南： それも一瞬考えました。自分たちでやった方が早いという話もありましたが、そもそも僕は地場の人たちと一緒にやっていくのが好きだし、こんなにカッコいいお店は他にないなと思ったので樋口さんにお願いしました。

樋口： この店をやっといて良かったです(笑)。

間違いないです。南さんは様々なショップを手掛けられていますが、地方のセレクトショップの良さは何だと思いますか

南： 一番は、地元に根ざしていて顧客さんやファンの方がいることです。僕は「Graphpaper」の時もそうでしたが、地域のお店に商品を卸す際は自分の目でお店を確かめます。その時に、接客しているところをはじめ、お店のいろいろな部分を見させていただくのですが、勉強になることも多くて。また、その地域で長くやられているお店は、顧客さんと家族的なお付き合いをされているから、僕らが今考えていることや、やりたいことを代理で伝えていただくことで、すっと受け入れてもらえる。僕らがいきなり来ても伝えられないことを、地場の人たちとのコミュニケーションのある人たちが僕らの代わりに伝えてくれるので、地方のセレクトショップさんはすごく大切な存在です。

樋口： 南くんは自分でお店をやっているし、今までディレクションで関わったところもお店。もちろんブランドのPRもやっているけどお店が主体になっているので、お店でお客さんと接することの大事さまで考えてくれます。それってすごくありがたい。また、お店をちゃんと運営していくことを理解しているし、ずっとリスペクトしてくれているので、考えてくれたことをなるべくそのままの形で表現できたらいいなと思っています。

南さんは名古屋へ何度も来られていると思いますが、名古屋にどのような印象をお持ちですか

南： いろいろなことに興味のある人は多いと思いますが、意外とミーハーでもないですよね。『1LDK』を作った時も、東京のことを知っている人が多かったからたくさん来るのかなと思っていたら、そうでもなくて(笑)。そんなにミーハー感もなかったので、思っていたイメージとは逆かも。

樋口： 僕はベースが岐阜だから、外の視点と中の視点で名古屋に対して思っているかもしれないですが、今のお話でいうと何を仕掛けても動き出しが遅いとは思います。

南： 確かに慎重な人が多いかもしれないですね。

樋口： 名古屋は世間体を気にする文化ですよね。だから、みんなに合わせるところがあると思う。これはアリだとなると一斉に来るけど、その評価が確定していないうちは自分から動けない。様子見が長いんですよね。

南： 分かります。ちょっと時間が経ったら、急に普通に来るようになりますよね。

樋口： ある時から急にそうなるんですよ。今まで名古屋にオープンした店も最初は様子見でした。思ったほど来ないし思ったほど売れないなから始まる。でも、今では来てくれるという…。

よく名古屋は難しいと言われるのは、その気質が原因なのかもしれないですね。少し話は変わりますが、今インターネット通販で服を買うことは当たり前になってきています。お2人はネット通販に対してどうお考えでしょうか

樋口： 僕らは実店舗で接客することが武器だから、ネット通販は僕らの良さを活かしにくい場なのかなとは思っていました。ネットの同じものがたくさん売れるという特性は、僕らのやりたい売り方ではない。だからと言ってそれを否定するわけではなく、それはそれですごいと思っています。ただ、今まではうちがやることではないと。でも、もうそう言っていられない時代なのかなとも思っています。実店舗だけで成長するのは難しいので。だから今は、ポイントを付けるから、売れるからという方向には持っていきませんが、自社でキレイな形を作って、それを伸ばせるのならやってもいいのかなとは思っています。

南： 現状ネット通販はやっていらっしゃるんですか？

樋口： 全然やっていなくて(笑)。今でも売上のほとんどが実店舗です。でも、さすがにこの時代それだけでは厳しいし、これからそういう傾向になっていったときに対処できないのも困るので、今は仕組み作りだけやっています。今年の年初からちゃんと動き出して、閲覧数やフォロワー数が増えて反響も出てきたので、割といい形でやれているのかなとは思っています。

南： 僕はネットも全然OKで、サービスの一環だと思っています。遠い人や忙しくてなかなかお店へ行けない人のフォローにもなりますし。僕らは定番で同じものを作っているので、同じものをもう一着欲しいと思った時に、ネットはサイズが分かっていれば買いやすいですよね。それに対応しているところがひとつ。もうひとつはメディアとしての役割。うちの店に来る人は、僕らが商品を撮って載せているウェブサイトのページを見せて「これありますか？」と言う人が多い。インスタもですが、自分たちで発信できるようになったので、その強みがECに現れて実店舗に返ってきています。ECで買う人もいれば、お店に来る人もいる。サービス的なこととメディア的なこと。ECはこの二つの側面でみています。

これからは、ネットと上手に付き合っていくことも必要なのかもしれないですね。最後に、樋口さんの今後のビジョンをお聞きしてもいいですか

樋口： みんなが活躍できる場を提供したいですね。最初って、みんな喫茶店でバイトするか服屋で働くかみたいな感じで入ってくるんですよ。一生働く場だと思っていないので、その意識を変えたい。一生働ける会社にすることが僕のテーマなので、もっとみんなと話し合ってどうしたいかを聞いて、店なのかバイイングなのかネットをやりたいなのか、スタッフと一緒に会社を作っていきたいのが僕の思いです。

南： 素晴らしい活かし方じゃないですか。先日ここで尾花くんとかが集まってフリーマーケットやっていましたよね？ああいうのはいいですよね。

樋口： 取り引き先が多いのはうちメリットのひとつだと思いました。楽しかったです。

南： お客さんは絶対に喜びますよね。普段だったら買えない私物などを持ってくるわけだから面白いですよね。ここは建物も大きくてポテンシャルあるから、いろいろやれたらもっと面白くなるのになと勝手に考えています。ぜひ何かやりたいな。もう3分の1ぐらいもらったような気分になっていますから(笑)。

樋口： 2Fにはまだ60坪のスペースがありますから、是非よろしくお願いします。